第1章 垂直安定板に関するセクション

[翻訳者注]

この章ではセクショ1400〜1404までの変数について一覧表形式で紹介しています。各変数は表形式で記載されており、最上段の左側にセクションナンバーとそれに続いてオフセット値、右側に変数の名前が記してあります。2段目が Bell 206B の標準値、3段目が変数の解説になっています。

1400 Helicopter Vertical Stabilizer Section 

1400,0 Vertical Stabilizer Surface Area (sq. ft.)
Default Value 8.08
この変数の数値を減らすと、高速時のヨー安定性が減少し、大きくすると fishtailing 現象が大きくなります。実際の Bell 206B の垂直安定板の面積は 8.58 sq. feet ですので、標準値はほぼ実機と一致します。

 

1400,8 Vertical Stabilizer Span (ft.)
Default Value 5.19
Bell 社が公開しているスペックシートによれば、垂直安定板全幅は 6.6 フィートとなっていますが、この数値は tail boom を含んでいます。MS はおそらく tail boom を含まない値をモデリングしているものと思われます。テストフライトの結果、この変数が操舵に関するコンポーネントの寸法をモデリングしていることが判明しています。値が0以外の正または負の数値であれば体感できる変化がおき、0とすると必ずクラッシュしてしまいます。0にすることはすなわち垂直安定板を取り除いてしまうことになりますから当然ですね。

 

1400,16 Vertical Stabilizer Angle of Incidence
Default Value 0.0349
Bell 社のスペックシートから垂直安定板は機軸から約10インチ右にオフセットされています。この変数に関してはまだ100%定かではないですが、以前に行った実験の結果とよく一致しています。

[以前の実験]

この変数値を 9.0349 に設定すると、時計回りにきりもみ回転をしながら tail boom が持ち上がり、墜落してしまいました。1.0349に設定すると、逆に反時計回りにきりもみ回転を起こします。トルクを相殺するためにペダルを踏み込めば、効果は少ないものの制御ができます。0.5349 に設定した場合には fishtail 現象を起こします。制御可能なのですが、機体は降下し始めます。-0.5に設定した場合には時計回りに尾部が回転し始めます。デフォルトの0.0349では出力トルク70%の水平巡航時に、尾部が左に回転する傾向にあります。

 

1400,24 Vertical Stabilizer Position Fore/Aft (in.)
Default Value 229.6
この変数はセクション1403内の Tail Rotor Position Fore/Aft の数値と同じになっています。水平安定板にかんする同等の変数はセクション1401のオフセット24に設定されています。じつはオフセットの数値が同じになっていることから、この変数を発見することができました。

 

1400,32 Unknown
Default Value 3.35
不明な変数です。3000から-3000まで数値を変えてみましたが飛行特性、計器に表れる数値ともに体感できるような変化はおきませんでした。セクション1401のオフセット32も不明です。

 

1400,40 Vertical Stabilizer Lift Coefficient
Default Value 0.2
正の数値は機首を左に向けます(尾翼右側の揚力が増します)。負の数値であればその逆で、機首が右向き傾向(尾翼左側の揚力がまします)になります。この変数はもしかすると、垂直安定板の後退角かもしれませんが、数値を変更した場合の効果については確認済みですので、モデリングの際には支障ないでしょう。

[巡航領域での実験]

この変数値を9.2にすると左回りに回転し始めます。0.0000001では体感できる効果がありません。-2.2にすると機首が右向きになる傾向を示し若干 fishtail 現象を起こします。0にすると若干ですが機首が左向きになります。

 

1400,48 Vertical Stabilizer Surface Drag Coefficient
Default Value 0.004
Cal Booth 氏が行った実験結果を示します

 

数値

到達最高速度

50 10kts, full collective
25 20kts, 100% torque (以下すべて100% torque)
10 35kts
5 50kts
1 93kts
.004 116kts
0 116kts
-0.5 129kts
-0.6 130kts
-0.7 133kts

以上のように数値が小さくなるほど速度が上がります。セクション1402と1403にはメインローターとテイルローターに関する抗力が設定されていますのであわせて参照してください。

 

1400,56 Vertical Stabilizer Efficiency
Default Value 1.0
この数値を0に設定すると機体は回復不可能なスピンに陥ります。ちょうどオフセット0の Vertical Stabilizer Surface Area を0にして垂直安定板を取り除いたのと同じになります。-0.1から100の範囲では体感できるような変化はありません。

続き:水平安定板に関するセクション